ケンポー
人が人 殺さぬ理想 現実に 難しくとも 抱き続けたい
日曜も数回シフト入り。
夜勤に入った時、前のシフトの主婦パートの人たちが、今度の参院選の話してた。
「ミカサちゃんはちゃんと選挙行くの?どこ入れるの?」
って聞かれた。
うちは選挙に行かないとお母さんに死ぬほど怒られる。
でも、どこに入れるかそこらの他人に話しちゃダメって言われてる。
「行きますけど、まだ入れるとこは考え中です」
って答えといた。
そしたら、
「選挙なんてわかんないよねー。いつもどこに入れていいか迷うから、あたしは行かないこと多いわー」
ってマダム・ポンパドール(仮名)が笑った。
「ねーねー、共産党が前からいっつも言ってる憲法九条って、あれなんなの?なんかあれに反対とかいつも聞くけど、よくわかんないんだよねー。今度、また憲法変わるんでしょ」
って、もう一人の主婦パートのアンジェリーナさん(仮名・40代の人)が言った。
「ほんと。最近憲法九条ってよく聞くけど、何条とか言われてもわかんないよね」
って二人で、「うんうん」って頷きあってた。
その時、店長に夏休みの予定を早めに出せって言われて来てた次郎君(仮名・大学生)もそこにいて、
「えっっっ」
ってすごく驚いた声をマジで出してた。
「ミカサちゃんは憲法九条とか言われても、それなんだかわかるー?」
ってアンジェリーナさんにニヤニヤ聞かれた。
「え………戦争の……放棄………?」
っていきなりテストみたいなこと聞かれて、私(高卒)は焦って答えた。
「あー、そーなんだー。憲法ってよく変わるから、いちいち覚えてらんないんだよね」
ってアンジェリーナさんが言った。
「今の憲法にいつ変わったんだっけ?最近の憲法なんて今の子は学校で教わったばかりなんだろーけどね。生活に関係ないことまで覚えてらんないからね」
ってマダム・ポンパドールも言った。
次郎君が死ぬほど呆れて、私だけに聞こえる声で、
「あのオバハンたち、聖徳太子の時代に生まれたのかよ」
って、ボソっと言った。
その時、私と一緒のシフトに入るブルータス(仮名・大学中退)が出勤してきた。
「ブルータスは憲法九条って知ってるの?」
って主婦パート二人に聞かれてた。
「え?ケンポーキュージョー?ケンポーって何???」
ってすごくめんどくさそうに答えて、バックヤードに入ってった。
「…あいつ、どーやって大学入ったんだよ」
って、次郎君がまた死ぬほど呆れてた。
こんなもんだよね、憲法の認識って。
私も全文覚えてないし。