ユーミンと伝説
リビングに ずっと置いてある サーフボード 私のお父さん 伝説のサーファー
- 作者: 松任谷由実
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1984/05
- メディア: 文庫
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この前、ユーミンの「ひこうき雲」の歌詞のことで書いたら、コメントで、あの歌詞のモデルのことが書かれてるリンクを教えてもらった。
そのリンク先に出てきたユーミンの本が、なんか記憶あるー、と思ったら、お母さんの本棚にある本だった。
アマゾンに直接見にいくとちゃんと表紙の画像があるのに、はてなに貼ると画像がなくなるのはフシギ。
ユーミンは私のお父さんが好きだから、家にカセットとかCDがたくさんある。
それで「ルージュの伝言」って聞いたことあるけど、ちゃんと聞いたのは「魔女の宅急便」見た時。
なんでこの歌が、「魔女の宅急便」と関係あるのか、今もぜんぜんわかんない。
夫が浮気してる歌と魔女となんで関係あるの?
お父さんがすごいユーミンが好きだったんで、ドルフィンとかゴッデスとか、私も連れていかれた。
うちには私が生まれた時から、ずっとゴッデスのサーフボードがある。
リビングの角のとこにずっと立てかけてある。
すごい邪魔。
でも、お父さんが死ぬほど大事にしてるのだから、捨てたらいけないんだって。
ってお母さんはいつも言うけど、
「あんたが捨てたければ捨てていーのよ」
って、私に捨てさせようとしてる。
サーフボードってどのゴミの日に出せばいーのかわからないから、まだ捨ててないけど。
それに、お父さんは自分勝手に生きててあまり帰ってこないくせに、うちに自分の大事なものをぜんぶ置いてってて、それを家族が大事にしてくれてないとすごく悲しがる。
腕時計集めが趣味で、お父さんの箪笥に20個ぐらいロレックスがある。
お母さんが、
「いざとなったら、これ売ればいーから」
って言って、これは捨てないでおいてる。
あと、すごいセーラームーンが好きで、ビデオとLDとDVDが揃ってて、人形とかグッズとかいろいろ大量にある。
すごい邪魔。
音楽は、ユーミンとサザンとビーチボーイズが好き。
だから私は小さい時から、これ聞かされてた。
私は小さい時から、お父さんがサーフィンも大好きだって聞かされてた。
「ミカサがもうちょっと大きくなったら、サーフィン教えてやるからな」
ってずっと言われてた。
でも一回もサーフィン教えてもらったことがない。
というか、一度もお父さんがサーフィンしてるのも見たことない。
でもサーフィン映画が好きで、映画の「ビッグ・ウェンズデー」はお父さんの青春そのものなんだって。
「稲村ジェーン」を一緒に見せられた時も、お父さんから、すごいビッグウェーブに乗るやり方ってうるさく教わった。
お母さんはお父さんのこと、
「あの人、伝説のサーファーだから」
って言う。
だから、お父さんはすごいサーファーなんだと思ってた。
でも、「伝説のサーファー」の意味が違った。
お母さんはお父さんと最初出会った時は、お父さんからナンパされたんだって。
お母さんはほんとに子供の頃からすごい勉強できて、成績はオール5以外とったことなかったんだって。
それでそのままこじらせ女子になって、恋愛を難しく考えてたんだって。
それでいつも大学でも女子の友達とだけ遊んでて、夏の夜に池袋の丸井の交差点で友達と信号待ちしてたら、お父さんが車で寄ってきて、ナンパしてきたんだって。
お父さんも友達と一緒で、自分たちはちゃんとした公務員だから、って証明書?見せて、お母さんと友達を安心させたんだって。
お父さんはその時は本当に公務員で、そのあと、カメラマンになりたいからってやめた。
私が生まれた時は、お父さんはカメラマンだった。
でもカメラマンとしてぜんぜん仕事がないカメラマンだったから、最初からお母さんが家族養ってた。
お母さんと友達は、夏だから海に行きたいと思ってて、それでつい、お父さんのナンパに乗って、そのまま一緒に海に行ったんだって。
その時に、お母さんがお父さんがあまりにバカっぽい話しかしないバカ男だから、すごいバカにしたら、
「人間、バカになったほーがラクだよ。人生ってバラ色だから」
って言われて、ハッとなったんだって。
そういうバカな人ってお母さんのまわりにぜんぜんいなかったから、バカっていーな、ってつい思っちゃったんだって。
それでお母さんはお父さんとつきあって、お父さんから、
「今までこんな頭のいい女の人とつきあったことがないから結婚してください」
って土下座されて、つい結婚して、私が生まれた。
お母さんは、この世で一番バカなのは自分だった、って言ってる。
あんな男と結婚した自分が一番バカだったって。
でも、お父さんは、お母さんをナンパした時は、自分はすごいサーフィンが好きで、だから海が大好きなんだって熱く語ったんだって。
お母さんは、だれもまわりにそういうマリンスポーツするようなタイプがいなかったから、自分もサーフィンやってみたくて、お父さんとつきあったんだって。
だけど、お父さんは一度もサーフィンしてるとこ見せなかった。
お母さんと結婚してからも、一度もサーフィンに行くことなかった。
一緒に暮らしだした時に、
「これがオレの命より大事なボード」
って、サーフボード持ってきたけど、それは最初から新品だったし、それからずっと家から持ち出されたことなくて、うちのインテリアになってただけだって。
お父さんは、話の中だけのサーファー。
だから、伝説のサーファー。
我が家では、お父さんがサーファーだってのは伝説。
誰も見たことがない伝説。
ユーミン聞くと、お父さんに連れてかれたドルフィンとかゴッデスとか、なんだったの?って思う。
だいたい、お父さんがカメラマンってのも、なんだったの?って思うし。
お父さんは一冊だけ写真集出してる。
でもそれは、私のお祖父ちゃんの本と違って、アマゾンでも売られてない。
お父さんはカメラマンとしても伝説。
あんなお父さんのDNAが私にも入ってるんだから、私もなにかの伝説になれるかもしれない。