真夏のペーパームーン
夜勤明け 明るくなった空に いわし雲 夏が手渡す 秋へのバトン
夜勤にはいると、夜明けの時間が少しずつ違ってくるの、わかる。
夜勤がいちばん楽しいのは、夜が朝になるのを見れること。
この時間働いてなかったら、だいたい寝てるし、起きててもわざわざ空を見に外に出たりしないと思うから。
夏至をすぎてからが夏!って感じなのに、夏はどんどん日が短くなってく。
先週まではどこにいっても冷却スプレーが売り切れてて、みんな残暑で買いまくってる!ってすごい焦ったのに、今日また買いにいってみたら大量に入荷されてた。
今日みたいにこれから涼しくなるんだったら、今までみたいに売れないかもね。
はてなのトップで、ひと夏の思い出ってテーマがあった。
写真がすごい綺麗なブログもあって、いろいろ見てて楽しかった。
そのリンク貼って書くと、トピックの新着に出ちゃうみたいだから、自分のはリンクしないで書くー。
今年の夏の思い出、じゃないし。
なんとなく「写真と夏」で思いだした話。
伝説のサーファーの記事書いた時、お父さんは伝説のカメラマン、ってことも書いた。
お父さんは小さい時から、警察官になりたかったんだって。
ぜんぜん勉強はできない人だったから、高卒で警察の試験受けるつもりだったんだって。
でも、お父さんも弟も学生の時、すごい不良すぎて、警察に補導されたこともあったから、警察官にはなれなかったんだって。
それで、ちがう公務員になった。
お母さんをナンパした時は公務員だったけど、つきあうようになって、お父さんが虫歯ぐらいで仕事休むから、お母さんはすごいびっくりしたんだって。
「虫歯が痛いから休みます」
って電話すると、なにも怒られないで休めたんだって。
「公務員って虫歯で休めるんだよ」
ってお母さんは私によく呆れて言ってたけど、それ、公務員だから、じゃなくて、お父さんだから、だと思う。
お父さんだから、虫歯ぐらいで仕事休むんだと思う。
お父さんはお母さんにぜんぜんサーフィンするとこを見せないサーファーだったけど、お母さんに、波乗りの仕方だけじゃなくて、サーフィンの写真の撮り方もすごいいろいろ教えてきたんだって。
チューブの中でどーやって撮るかってすごい詳しかったみたいだけど、そのうち、
「オレも波の写真撮りたい」
って言いだして、それですごい高いカメラを欲しがりだしたんだって。
でもそんなお金ないから、10年以上やってた公務員やめて、退職金ぜんぶ使って、高いカメラ買って、
「カメラマンになってくる」
って言って、ハワイに行っちゃったんだって。
ハワイに行ったのは、すごいチューブが撮れるからじゃなくて、日本語が通じるから。
お父さん、英語がぜんぜんできないから、海外旅行は日本語が通じそうな国を選んでる。
私が生まれてから(小学生の時)、突然上海に行っちゃったことあったけど、中国なら漢字で筆談できる、と思って行ったんだって。
でもぜんぜんあっちで日本語の漢字が通じなくて、
「上海はオレに合わない」
って帰ってきた。
私にくれたお土産は、パンダの厚紙のカードをパタパタめくっていくと美女のヌードになる、ってやつだった。
お母さんが、
「子供にこんなもん、バカじゃないの!」
って、すぐ取り上げたけど。
子供にそういうお土産買ってくるDQNなとこが、お父さんにある。
お父さんは、カメラマンデビューするから、ってハワイに行って、それで帰ってきたけど、お土産はアロハシャツやTシャツばかりで、ぜんぜんカメラマンになってきてなかった。
お母さんはいつも、
「その時にお父さんのこと、見限ればよかったのよ!」
って自分に怒ってる。
でも、お母さんはまだお父さんのこと好きだったから、お父さんがバカに見えても、優しい解釈しよーって努力したんだって。
それに、お父さんはカメラの趣味があったのはほんとで、自分で撮った写真のいろんなアルバムを持ってた。
カメラのサークルみたいなのにもはいってて、そこの中にプロで仕事してる人もいて、それで自分もプロになろーって思ったみたい。
だから、ハワイから帰ってきて、ぜんぜん波乗りと関係ない写真をたくさん撮ってきたの持って、サークルの先輩に仕事を紹介して、って頼んだりしたんだって。
お母さんと結婚することになって、お父さんが、
「自称カメラマンっていう無職」
だってすぐ気づいたお母さんのお父さん(お祖父ちゃん)は、お父さんに、
「仕事見つけてから結婚の申し込みをし直しなさい」
ってお説教したんだって。
そしたら、お父さんは図々しく、お祖父ちゃんに、出版社紹介して、って頼んだんだって。
お祖父ちゃんは、娘の夫になる人だからしょーがないから、知ってる出版社にお父さんのこと、頼んだんだって。
サークルの先輩やお祖父ちゃんの紹介で、お父さんは一応プロになれた。
でも、チラシの写真とか、雑誌のすごい小さい写真とか、そういうぜんぜん名前もでないし、すっごい安い仕事しかなかったんだって。
でも、お父さんはその時からずっと、「職業はカメラマン」ってことになってる。
私が学校行ってる時、お父さんの職業聞かれて、
「カメラマンです」
って言うと、みんな、
「すごいねー」
って言ってくれた。
お父さんのこと、カッコいい、って思ってた。
いつから思わなくなったか、忘れたけど。
お母さんからも、お父さんの職業きかれたら、
「しがない自営業です、って答えときなさい」
って言われるよーになったし。
「しがない」って意味が最初わからなかったけど、国語の辞書で調べたら、
ただの「自営業」じゃなくて、「しがない」をつけるのがポイントだと思った。
お父さんはそのうち、えっちいなカメラマンになった。
えっちいな仕事のほーが、ちゃんと続いてもらえたんだって。
でも、お父さんは、縛られる、っていうのが嫌い。
だから、公務員より駆け出しのフリーの仕事のほーが、ほんとーは仕事くれる会社にぺこぺこしなくちゃいけないのに、仕事のことで会社からなんか言われるとすぐ喧嘩して帰ってきたんだって。
それで、もらえてた仕事ももらえなくなってったんだって。
仕事がぜんぜんなくなったから、お父さんは、自分で好きなものしか撮らない、って言いだしたって。
それで、撮影旅行に行く、って、何か月も帰ってこなくなったって。
でも、そういう「撮影旅行」って、ただの浮気だった。
お父さんは、浮気する女ができると、その女のとこから帰ってこなくなる。
お母さんには、それを「撮影旅行」って言ってたらしいけど、お母さんはバカじゃないから、お父さんのつくウソってぜんぶウソってわかるんだって。
浮気以外のことも。
ベルリンの壁が崩壊して10年たった時、お父さんはいきなり、
「崩壊後のベルリンをどーしても撮りたい」
って言って、急に家を出てった。
私が車にひかれて入院してた時。
弟もまだ小さいから、お母さんはすごい大変だったのに、お父さんはどーしてもベルリンの壁崩壊10年後っていう今を逃したくない、って言い張ったんだって。
仕事の飛躍のチャンスにしたい、って。
それでお母さんは、お父さんのベルリン行きを許した。
でも、あとで、お父さんは新しい浮気相手に子供ができちゃったから、それでその女の人のとこに住んでたのがわかった。
そのあともお父さんは、違う女と浮気したけど、そのベルリンさんとはまだ続いてる。
ベルリンさんは、うちの最寄の駅の隣の駅の近くにあるアパートに住んでる。
私はたまにその道を通るぐらい近く。
そのアパートはヘンな形のブロックの塀がある。
その一部が欠けてるから、あれがお父さんのいう「ベルリンの壁の崩壊」なんだと思った。
だから、お母さんもその女の人のこと、ほんとに「ベルリンさん」って言ってる。
お父さんがベルリンの崩壊の家出する前の夏。
ぜんぜん仕事がないから、心霊写真を撮りたい、って言いだした。
夏だから、いろんな心霊スポットに行って撮影するって。
それで、家族みんなで心霊写真の撮影旅行に車で行こう、って騒いだ。
お母さんは、すごいバカバカしくて、一緒につきあわなかった。
弟もまだ小さいから、怖がらせないで、って怒った。
だから、私だけお父さんについてった。
その頃のお父さんの車は、大きいワンボックスカーで、後ろに布団も積み込んで、フツーに寝れる。
布団と着替えとすごい大きいクーラーボックスと、お父さんのカメラのいろいろと積み込んだ。
「何日か帰らないけどヘーキだよな」
ってお父さんに言われたけど、私はお父さんの車に乗るのすごい好きだったからヘーキだった。
それで、車の中で寝たり、温泉入ったりして、田舎のほーをいろいろ走った。
あやしい、っていうとこ見つけると、お父さんは車降りて、撮影してた。
ほんとにカメラマンみたいだった。
でも、フィルムを1本、どこかのお店で現像してみたら、ぜんぜん心霊写真なんて撮れてなかった。
残りのフィルムを帰ってから自分で現像してもムダかも、って絶望してた。
ゴハン食べにお店に寄ると、お父さんは、ここらへんでオバケでるとこありますか、って聞いてた。
それで、でるよ、って教えられたとこに行って撮影した。
山道のすごいくねくねしたとこにあるトンネルに出る、って聞いて、そこに夜中に行った。
トンネルの中に女の人が浮いて出るんだって。
だから、お父さんはそのトンネル、何往復もした。
「ミカサ、見えたか?」
ってなんども聞かれたけど、ぜんぜん見えないし。
「幽霊なんているわけねーよなー」
ってお父さんはすごいヤケになった。
それで、そのトンネルのすぐ近くの公衆トイレに入った。
ぜんぜんだれもいない山の中のトイレで、水漏れの音がしてたから、
「ここに出そー」
って、お父さんは鏡に向かって何枚も撮ってた。
それから私に、
「あの中からちょっとだけ顔出してみて」
って言ってきた。
個室の中から顔を少しだけ出してオバケのふりしろ、って。
それで、お父さんに言われたとーり、顔をちょっとだけ出した。
それを何枚も撮って、
「それでいーや」
って言った。
その時は私はわかってなかったけど、お父さんはその写真を心霊写真っていって売り込もうとしたんだって。
でも現像したら、ぜったいバレるからやめなさい、ってお母さんにすごい怒られたんだって。
しょーがないから、お父さんは心霊写真のプロになるのは諦めた。
その写真はお母さんが呆れてお祖母ちゃんに見せたら、お祖母ちゃんがすごい気にいって、お父さんにひきのばさせて、今もお祖父ちゃんの仏壇の横に飾ってある。
なんかあまりきれいじゃない男トイレの個室から、まだ小学生の(低学年)私がちょっとだけ顔だしてる写真。
お父さんは、トイレの花子さんをほんとに撮った、って売り込むつもりだったんだって。
「ミカサのお父さんはほんとにおバカさんだねー」
ってその写真見ながら、お祖母ちゃんは今も笑って言う。
お祖母ちゃんは、お父さんのことすごい嫌ってるけど、その写真だけはすごい好きなんだって。
それで、お祖母ちゃんはその写真をお父さんが本物のトイレの花子さんって売るつもりだったって聞いて、
「ミカサのお父さんとミカサはペーパームーンみたいだねー」
って言った。
ペーパー・ムーン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: パラマウント ジャパン
- 発売日: 2006/04/21
- メディア: DVD
- 購入: 8人 クリック: 81回
- この商品を含むブログ (78件) を見る
ペーパームーン、って映画のこと。
(※私のはてなに貼るアマゾンの画像は私のアフィリエイトじゃないです。作品を紹介するのに便利だから画像借りてるけど、買ってくださいって宣伝の意味はぜんぜんないです)
お父さんがベルリンの家出から戻ってきて、私がその時はひきこもりになってて学校に行ってなかったから、昼間ツタヤに映画借りによく行った。
お父さんはすごい映画好き、だから。
それで、「ペーパームーン」見たいって私が言って、一緒に見た。
お父さんが詐欺師で、でも詐欺師としてダメダメで、それを小さい娘が助ける、ってコメディ映画だった。
これ、ほんとの親子の俳優が親子役してるんだって。
お父さんが、その女の子のこと、
「この子ミカサみたいだな。ほら、こういうしかめっ面するとことかそっくり」
ってすごい笑ってた。
それで、その映画の詐欺師のお父さんのこと、
「こんな父親、ひでーな」
って笑って批判してた。
私のお父さん、ペーパームーンのお父さんのこと、他人事だと思ってる。
お祖母ちゃんが、「ペーパームーンみたい」って言った意味、すごいわかった。