下(おばさん)には下(私)がいる
暑すぎて 息が苦しい 熱中症 それって頭が 沸騰してるから
やられた。
今日仕事行ったら、店長からシフトの話された。
シフトはずっと同じじゃなくて、一定期間ごとに作る。
だから、作る時、ぜったい入れない日っていうのをみんな出して、それで店長と店長代理がシフト表作る。
でも店長は今年になってから、すごい忙しくなったから、シフト表は店長代理とアンジェラさんに最初に作らせて、それを最終チェックするだけになった。
私は、一回ここやめて、また採用された時、基本的に自分のシフトの希望はだせないことになってた。
でも、どうしても休みたい時はシフトの更新の時にいえば、休ませてもらえる時もあった。
ダメな時もあったけど。
この前、店長に、
「できればこれから火曜は夕方と夜勤は入れないでほしいんですけど」
って相談してた。
火曜はダリさんが休みの日だから。
その時は、
「火曜?火曜ならほかの人も結構入れるからだいじょーぶだろ」
って言われた。
だけど今日、これから火曜の夜勤は固定になったから、って急に言われた。
月曜と火曜って新商品が入ってくる日だから、納品はいろいろ大変になる。
棚も作らなくちゃいけないから、ポップとかそういう準備もいる。
棚作るのは、ほんとは発注担当者がやることになってるけど、最近私が結構やらされてる。
昨日夜勤に入ってたアンジェラさんが、今日店長に電話してきて、深夜帯の仕事の質がすごいダメすぎるから、シフトのコンビはもっと考えて組ませたほうがいい、って言ったんだって。
リセットとカトリーヌさんはダメすぎるから、クビにしたほうがいいって。
でも、店長は、いきなりふたり補充なんてムリだから、クビとかは今はなしで、って言ってきた。
「アンジェラさんはもう面倒みきれないっていうから、リセットとカトリーヌさんはミカサとなるべく組むようにするから」
って言われた。
リセット君ならまだいーけど、カトリーヌさんは私だってぜったいムリ。
あっちも私と組みたがらないと思うし。
それ言ったけど、
「アンジェラさんは、カトリーヌさんとほかの人とはダメでもミカサとはうまくやってるって言ってたよ。ほかの人はカトリーヌさんと組みたくないってみんな言うからさ。女同士だとダメなんだろ」
って言われた。
私も女なんだけど。
それだけじゃなくて、新商品が入ってくる月曜と火曜は仕事ができる人入れないとダメだから、ってアンジェラさんが言ったんだって。
それで、月曜は自分がこれから夜勤固定で入るから、火曜はミカサ、って店長に言ったんだって。
店長代理も、それが一番いーから、ってことで、即決定されたって。
「私はよくないです。火曜休みたいって言ったじゃないですか」
って文句言ったら、
「だってアンジェラさんは月曜希望してるから。ミカサも火曜希望だって聞いたよ」
って言われてびっくりした。
「そんなこと、私、ここのだれにも言ったことないですよ。だってこの前、店長には火曜は休みたいって言ったじゃないですか」
って言った。
「そーだったか?オレも忙しすぎていちいち覚えてられないんだよ。従業員の人たちのことは店長代理とアンジェラさんのほうが詳しいから。アンジェラさんがミカサは火曜にしたほーがいいって言ってんだから、それでやってよ。アンジェラさんはミカサのこと認めてるから、そう推薦してきたんだよ」
って言われた。
ぜったいそーじゃないと思う。
私が火曜休みたがってるの、アンジェラさんとかカトリーヌさんとか知ってるから。
あのふたり、一緒になってダリさんのことしつこく誘って、こんどどこかのバイキング行く約束してたから。
ダリさんのことが好きってわけじゃないと思う。
私の邪魔したいだけだと思う。
そう考える私がおかしいのかもしれないけど、急にダリさんがおばさんたちにモテモテになったから、私の中にも黒い考えが湧いてくる。
アンジェラさんは、いままでも、違うことでいろいろ、だれにもわからないようにサラッと意地悪をしてくる人。
私と次郎君とそよかぜさんは、アンジェラさんのそういう陰湿さに気づいてる。
アンジェラさんって、すごい優しい感じのおばさん。
だからみんなそれで騙される。
優しい感じで、いろいろ聞いてくるから、ついみんないろいろ喋っちゃう。
でもそれ、ぜったいあとでほかの人たちにすごい陰口で言われてるから。
そよかぜさんにも最初、すごい優しかった。
カトリーヌさんがそよかぜさんいじめた時、アンジェラさんはそよかぜさんのこと、すごい慰めてあげてた。
でも、あとでほかのおばさんたちに、
「泣けばいーと思ってんだから、あのバカ娘」
って言いまわってた。
私はそれ聞いてもそよかぜさんには言わなかった。
そんなこと知っても、悲しくなるだけだと思ったから。
だけど、そよかぜさんがお店に買い物来た時、アンジェラさんが、
「すごい可愛い服だねー。どこで買ったのー?」
って優しく話しかけてきて、それからそよかぜさんが帰ったと思ったアンジェラさんがすぐ、
「なーんで仕事が忙しい時に来るのかね、あのバカ娘。なにあの服、あんなの似合ってると思ってんのかねー」
って、すっごい口調変えてほかのおばさんに言ったんだって。
でも、そよかぜさんは帰ったんじゃなくて、バックヤードに入っただけだったから、カメラのモニターでぜんぶアンジェラさんの豹変を見ちゃったって。
それで、アンジェラさんがすごい腹黒おばさんだったってそよかぜさんは気づいたんだって。
アンジェラさんって、ぜったい人のこと褒めなくて、だれから見ても一番仕事できる店長代理のこともすごい悪口言ってる。
だから、私のこと店長には認めてるように言っても、それってなんか黒い意味があると思う。
女の世界って、男にはわからないから。
すごいどろどろ。
表面ではみんなうまくいってるみたいに見えてても。
私だって、ここで働いてるうちに、すごい黒い考えが簡単に湧くようになった。
マダム・ポンパドールから前に、
「性格悪い人と性格いい人がひとりずついると、性格いい人は悪くなるから。性格いい人がふたり以上いないと悪い人のほうが勝つんだから。底辺って、底辺にいるだけで底辺に染まっていくんだよ。ミカサはイイコちゃんぶってるけど、あんたも底辺なんだからね。ミカサもそよかぜも気取るんじゃないよ」
って言われたことある。
それ、ほんと。
次郎君はすごい人を見る目あるから、おばさんたちの人間関係とか性格も結構いろいろ気づいてる。
おばさんはおばさん同士じゃなくて、男と組ませたほうが仕事の効率はぜったいあがる、っていつも言ってる。
火曜はぜったい休ませてください、って店長に頑張れば、シフトをまた変えてもらえるかもしれない。
でもそうしたら、おばさんからぜったいなんか陰険な反撃される。
おばさんと戦うなら、戦い続けないとダメ。
勝ちたいおばさんに勝てる方法ってひとつだけあると思う。
最初からこっちが負けること。
カトリーヌさんにも私はなかなか負けれないから、カトリーヌさんはいつまでも私に戦い挑んでくるんだと思う。
アンジェラさんの意地悪には、私は戦う気はぜんぜん湧かない。
カトリーヌさんみたいにわかりやすいどすどす攻撃じゃないから。
目では見えない細菌みたいに、心の中から腐らされてくみたいにやられる。
だれにももう文句言わないで黙って火曜のシフト入れば、アンジェラさんに戦わないことになる。
私が悔しがらないのが、一番、アンジェラさんの意地悪に勝てるんだと思う。
でももっと一番いい「負けて勝つ」やり方って、今のお店やめることだと思った。
その方法、今の私はとらないから、やっぱり私はおばさんたちと戦ってることになるのかもしれない。
すごい自分がバカバカしいと思うけど、それが自分も底辺の人間ってことなんだと思った。
別にダリさんと会えないなら、それでもいいけどね。
これからまたすごい暑くなるみたいだし、今の私は暑さと戦うほうが重要。
負けたらほんとに死ぬから命がけ。