ひきこもり女子いろいろえっち

20代ひきこもり系非正規女子のつまんないぼやき。とてもダメな人が書いてます。

店内台風

じわじわと にじんでくる水 嵐の夜 床に浸水 心に浸水


台風、すごかった。
すごすぎ。

最初はぜんぜんすごくなかったから、騒ぎすぎだよねー、って言ってたのに。


火曜は夜勤。
出勤したら、外にある風に飛ばされそーなものだけ片づけられてた。


店長のデスクには、本部からの具体的な台風対策が書かれた紙が貼りつけられてた。
「台風さー、今夜すごいらしいから。まぁ、今夜はミカサだからダイジョーブだろーけど」
って、店長がすっごいかったるそーに言ってきた。


私は具体的な対策書かれた紙に目を通して、
「これはどーやるんですか?」
って、わからない部分は聞いた。


「オレもよくわからん。まぁ、ダイジョーブだろ」
でも、店長の返事ってこんなテキトー。


店長、熱だしてたみたいで、早く帰りたがってたから、
「もー帰っていーですよ。送金やっときますから」
って言ったら、2分後に帰ってた。

 

夜勤にはいる時は風もまだなかったし、小雨だったから、一緒に組むカトリーヌさんと、
「台風、関東はそれほどでもないのかもー」
なんて話してた。


納品はぜんぶ、台風だから前倒しで来た。
火曜は新商品が入る日。
珍しく今回は、棚空けはぜんぶ終わってたし、私はポップも作り終えてた。


火曜だからダリさんは休みで、違う人が納品に来た。
「今日は前倒しだから、早く帰れるんだよねー」
って嬉しそーだった。


他の納品の人たちも、いつもより早く帰れるから喜んでたし。
朝刊もいつもより早く来た。


それで私もカトリーヌさんも、納品関係は早く仕事終わっちゃって、ヒマだからおでん食べよー、って、自分たちが食べたいおでんの具材を仕込んでた。
(仕込むのは自由だけど、こーいうのはもちろんだけど、ちゃんと買ってます)


それで、カトリーヌさんが最初におでん休憩とって、それから私がおでん休憩にはいった。
私がおでん食べてたの、夜中の3時半頃。


11時からお客さんが3人しか来なくて、1時すぎてからは誰も来なかった。
でも、小雨だし風は少し吹いてるぐらいだから、
「強盗は来そーだよねー」
って、台風より強盗を警戒してた。


本部から停電対策の指導も細かくきてて、でも強盗のこと、書いてなかったけどね。
停電した、って外からわかれば、それ狙って強盗来るかも、って私は思った。
台風だから、停電の可能性なんてあらかじめ、みんなわかってるし。


だから、おでん食べながら、ずっとカメラのモニター見てた。
あり得ないぐらい、お店はひっそりしてるし、外も車がぜんぜん通らないし、パトカーも来ないから、レジのお金、抜けるだけ抜くことにした。


2つあるレジは夜勤は1台、カラにして、警察の指導だから、って書かれた閉鎖中の看板たてといてる。
もう1つのレジも、夜勤は一定金額以上いれちゃいけないことになってるけど、それでも気になって、ほんとに最低限の現金だけ残して処理した。


カトリーヌさんはヒマすぎてずっと雑誌読んでた。
そしたら、急に、だれも来てないのに、自動ドアが開いた。
だれもいないから、びっくりした。
開いた瞬間、外がいつのまにすごい大雨になってたの、見た。
ドアはまた閉まって、それからまた開いた。


「横殴りの雨でセンサーが反応してんだー」
って、カトリーヌさんとホッとした。


でも、ドアのほー見て、またすっごいびっくり。
いつのまに、入口の前の店内の床が池になってた。


ドアが開いた時に雨がかかって濡れた、とかっていうんじゃなくて、池。
水深がある池。


「なんでー!?」
って、ふたりでびっくりした。


台風が来るっていうのに、店内はなんの対策もしてなかったから、入り口付近の商品の棚が、ドアが開いた時に入ってくる雨で濡れてた。
私は慌てて、濡れそーなとこにゴミ袋をカバー代わりにかけてった。


カトリーヌさんは立ってただけだったから、
「モップ持ってきて、床拭いてくださいー」
って言った。


そしたら持ってきたモップで池の水分吸ってたけど、
「ぜんぜんダメー!」
って、キレてた。


「モップの水分、しぼりながらじゃなくちゃダメですよ」
って言ったら、濡れてない床に濡れたモップの先置いて、それを足で踏んでしぼってた。
だから、濡れてない床も濡れた。


バカなの?


って、私は思った。


「モップしぼり器があるから、それ持ってきて」
って、私は商品棚にビニールかけながら言った。


そしたら、ぽたぽたしたモップ持って、裏にモップバケツ取りにいった。
だから、ぜんぜん濡れてなかった床に、裏まで水の道ができた。


バカなの?


って、私は思った。


やっと持ってきたけど、カトリーヌさんは不器用で、ちゃんとモップをしぼれなかった。
だから、ぽたぽたしたモップのまま、なんども拭いてるから、拭いてる意味なんてなかった。


「私がやりますー」
って、カバーかけおわったから、私がかわった。


モップをちゃんとしぼると、水分が吸い取れるから、池がだんだんなくなってきた。


「いつ、こんな池ができたんだろー」
って、ふたりでフシギがったけど。


私だけせっせとモップかけてたら、カトリーヌさんはやることなくて、
「じゃあ、ゴミ捨ててきますー」
って、来る時着てきたカッパ着こんで、納品の時に出たゴミ袋持って出ていった。


「えー。ドア開けないでー!」
って私が言った瞬間、ゴミ袋持ったカトリーヌさんがドア開けて、外に出てった。


その瞬間、外の雨がぜんぶ私目がけて降ってきた。


私の前面、ズブ濡れ。
拭いたばかりの床もビショビショ。


バカなの?


って、私は思った。


いったん開いた自動ドアがまた閉じて、それからカトリーヌさんが戻ってきたから、またドアが開いた。
またその分、店内がズブ濡れ。
カトリーヌさんはカッパで濡れてなかったけど、カッパがズブ濡れだったから、カトリーヌさんが入って裏まで戻ってった通路も、ぽたぽた垂れた滴でズブ濡れ。


バカなの?


って、私は思った。


でも、それどころじゃなくなった。
カトリーヌさんが開けてはいってきた自動ドアが、もー閉まらなくなった。


「ドアが開いたままー!」
って、ふたりで叫んでるあいだ、すっごい横殴りの雨がだいたい中に吹きこんできて、どんどん店内が濡れてった。


自動ドアの溝になにか詰まったのかもー、って、私は濡れながら、水が溢れてる溝を見てた。
そしたらカトリーヌさんが、自動ドアのスイッチ切って、手動で思いっきり閉めた。
私をはさんで。
思いっきり、私のカラダ、はさんで。


バカなの?


って、私は思った。


すごい痛かったけど、痛がってる場合じゃなかった。


さっきあれだけ拭いたのに、また床に水深がある池ができてた。


「えー。なんでー。これ、湧いてるのー?」
って、びっくりしてよく見たら、お店の壁と床の角のとこから、じわじわと水が溢れてきてた。


「ウソ―。こんなとこ、隙間があるー!」
って、ふたり、びっくり。


さっきよりすごい勢いで池ができてった。
いちばん深いとこは、指の第一関節ぐらいの水深。
これで、床がぜんぜんたいらじゃないのも知った。


床は店の奥のほーが低くなってるみたいで、いったん池ができたあと、そこから奥に川ができはじめた。


「川をせきとめるんだー!」
って、私はモップの先で水の流れおさえながら、カトリーヌさんに、
「なんでもいーから裏から持ってきてー」
って、叫んだ。


裏にはまだモップの換えの先もあるし、床を掃除する時のいろんな布があるから。


そしたら、どすどす裏に走ってったカトリーヌさんは、なんかに使ってたスクール雑巾1枚持って戻ってきた。


スクール雑巾だから、ノートぐらいの大きさ。
それで、水深のある池の水、拭きだした。


バカなの?


って、私は思った。

 

そのあいだにも、どんどん水が壁と床の角から溢れて入ってきてた。


とにかく商品棚を動かせるだけ動かして、それから私は裏にある布をぜんぶ取りにいって、それを床に投げて、水分の流れだけ一時的にせきとめた。


それで、溜まってる池を、バカみたいにモップで吸いとって、しぼって、吸いとって、しぼって、の繰り返し。
それやってて、どーにか、池がひろがらない、って感じ。


カトリーヌさんは、一緒になって、水深のある水たまりに、ノートぐらいの小さい雑巾浸して、それバケツでしぼって、また浸して、それしぼって、の繰り返ししてた。
そんな小さい雑巾じゃ、なんの意味もなかった。
でも、本気でそれをずっとやってた。
モップの換えの先もまだあるし、もっとおおきい吸水性のマットもあったのに、それは使わないで、ずっとスクール雑巾1枚だけで池をなんとかしよーってしゃがみ続けてた。


私、それ見てたら、


バカなの?


って、突然思えなくなった。


カトリーヌさんは、これ以上、なにしたらいーのか、わかんないんだ、ってことが、私にわかったから。


店長が、能力低い人に高い能力もとめてもしょーがない、って言ってた意味、すごいわかった。
悪意なんてぜんぜんなくて。


私はいつも、カトリーヌさんって「バカなの?」って思うこと、多かった。
それですっごいイライラしたし。
大雑把だし、無神経だし。


でも、大雑把や無神経じゃなくて、カトリーヌさんは、それがカトリーヌさんにとって考えつく「方法」なんだって、気づいた。


私だって、ほかの人にはわかること、私にはぜんぜんわからない、ってことある。
自分がわかってない、って気づいてもいないことも、いろいろあると思う。


カトリーヌさんも、そーいう部分があって、私はそーいうカトリーヌさんの「ここまでしかできない」って部分ばっか見てて、自分はできるのになんで?ってイライラしてたんだよねー。


カトリーヌさんが、ぜんぜんムダにしか見えないスクール雑巾の水しぼりを必死でやってたから、
「ここは私がやりますから、店長起こしてきてくださいー」
って、お願いした。


店内の浸水は、私たちに手に負えないレベルになってきてる、って思った。
明け方の4時半。
台風はまだこれからっていうから、ずっとモップだけで浸水防げない、って思った。


でも、店長はなんど電話かけてもぜんぜん起きなかった。
熱があるから、薬飲んで寝たのかも、って思ったけど、でも10年に一度っていうすごい台風が来る夜、電話で起きないってどーいうこと?って呆れた。


それで、私はカトリーヌさんに、
「モップ持って、この水の流れのとこせきとめててください」
って、頼んだ。
その水の流れがいちばんやばそーだったから。


それでズブ濡れになって上の店長の家に行った。
そしたら、信じらんないけど、店長いないし。
実家で寝込んだんだと思う。


オーナーに夜中電話すると、すごい怒られる。
強盗が来た時も怒りそーだよねー、って、オーナーの店の従業員は言ってる。
オーナーが怒らない呼び出しって、
「すみません。私、強盗に殺されちゃいました」
って、死体になって枕元に立たないとダメかもねー、っていうのがオーナーの店の伝説。


でも、浸水なんて私が入ってから一度も経験なかったから、オーナーに電話した。
そしたら、
「まだ入り口ぐらいなら、なんとかしろ。もっとひどくなったら電話してこい」
って、不機嫌に切られた。


靴がぐちゅぐちゅになるぐらいの水深になったから、お客さんが入れない!って思って、段ボールを重ねて、厚みのある通路を作った。
段ボールは入口から少しずつ濡れてったけど、濡れた床歩くより、濡れた紙を歩いたほーが滑らないと思ったから。


いちばん怖かったのは、お客さまの転倒だったから、もう浸水は防ぎきれないなら、転倒防止策しかない、って思った。


自動ドアの自動が壊れたままだから、手動にして、人が通れるだけの隙間開けて、そこに気休めのビニールカーテン作った。


そしたら、おじさんのお客さんがひとり、夜明けに来店した。
「床が池になってるので、お気をつけてくださいー」
って言ったら、
「なんだこりゃ。ちゃんと拭けよ」
って怒りながら、小走りで店内でいろいろ商品とって、買い物してった。


小走りするから、すっごいヒヤヒヤした。


「なんでこんなすごい台風で浸水してるってのに、お店閉めちゃいけないのー?」
って、私は思った。


池の床を小走りするお客さんの転倒防止の責任も、私とカトリーヌさんにあるのー?って。


「ドア閉めちゃって、台風のため閉店、って張り紙しよーよ」
って、私はキレて言った。
でも、そんな権限、現場にないからねー。


とにかく、できるだけ濡れてる通路に段ボールの道、作ってった。
それで、ほかの仕事なんてぜんぜんできなかったけど、その朝来る早朝のおばさんって、夜勤いじめがすごいヒステリーおばさんだった。


「朝の肉まん、補充しとかなくちゃ」
って、私が段ボール敷きながらカトリーヌさんに言ったら、
「そんなこと、やってらんないよ!」
って、怒鳴り返された。


「でも、お店の浸水で私が溺れてても、あのおばさん、肉まんの補充してないのー?って言うよ!」
って、私は手を洗って、肉まんとりにいった。


こんな朝に、呑気に肉まん買うお客さんがいるかわかんなかったけど。


浸水対策してるうちに、早朝の出勤時間。
最初におじさんのほーが来て、
「わー、すごいねー」
って、呑気な声して濡れた床に足突っ込んで、奥の床まで濡らして歩いてった。
それから、毎朝飲んでるカフェ買うからって、段ボール敷いて手がドロドロになってる私に、
「レジやってー」
って、呑気な声あげた。


台風で飛んでっちゃえばいーのに、って思った。


カトリーヌさんがレジやって、
「雨すごいですよねー」
って、おじさんとふたりでドアを大きく開けて、外を眺めた。
だから、また折角水分吸いとったマットがまた濡れた。


それから、怖いおばさんが出勤してきて、
「やだー、足濡れちゃうー」
って、私が拭いてたモップの先に乗って、自分の靴の底拭いてから奥に入ってった。


台風で飛んでっちゃえばいーのに、って思った。


おばさんは、浸水なんて見えてないよーに、いつもやってる発注から仕事はじめた。


「発注してる場合?」
って、私とカトリーヌさん、目を合わせちゃった。
カトリーヌさんと心が一体になったの、はじめて、かも。


おじさんは、
「すっごいねー、すっごいねー」
って、池の床に靴先入れて、水深確かめてるだけだし。


お店ごと台風に飛ばされちゃえばいーのに、って思った。


でも、店内の浸水はなんとか落ちついたみたいだった。
私が拭けるだけ拭いたら、しばらくなんとかなりそーだったから、早朝の人に、
「モップ置いときますねー」
って言った。
そしたら、おばさんが、
「モップ洗ってってー」
って言った。


カトリーヌさんがすごい鼻の穴開いて、私を見た。
カトリーヌさんは早朝のおばさんにいじめられてる側だから、この人にはいつも言い返せない。
ふたりでまた目と目を合わせて、早朝に呆れた。


私は、
「モップ、洗ってさしあげてー」
って、すっごい冷めた声出した。
そしたら、カトリーヌさんは、またモップをぽたぽたさせたまま、裏の洗濯機に持ってった。


カトリーヌさんが歩いた水の道が、そこにできてた。


私はすごい可笑しくなって、そのままにしてた。
そしたら、裏からカトリーヌさんのすっごい悲鳴が聞こえた。


「裏!裏に池!!!!!!!」
この叫び声で、なにが起こったのか一瞬でわかったのは、今まで浸水とたたかってた私だけ。


「えー!!!」
って、裏に行くと、バックヤードの奥が池になってた。

 

夜勤の退勤10分前。


床には、ぜったい濡れちゃダメなものが、いろいろジカ置きされてる。
「やばいよ!やばいよ!」
って、私は上の無事なものをどけてから、下で濡れちゃったものを救出して、それは店長の机に並べた。
台風対策もなにもしない店長の机なんて汚れても構わない、って思ったから。


それから、
「モップ、持ってきてー!」
って、カトリーヌさんに叫んだら、カトリーヌさんはまたスクール雑巾持ってきた。


「あ、あとは私がやります。。。。。。。。。」
って、私は全身から力抜けて、モップとりに走った。
それでモップで裏の池を吸いとってるあいだ、カトリーヌさんはずっと私を見ていた。


それで、なんかやらなくちゃ、って思ったんだと思う。


暴風がおさまるまで番重は倉庫じゃなくてバックヤードに保管、って言われてたのに、
「じゃあ、私は番重置いてくる!」
って、またカッパ着て、番重を暴風の中に持ちだしてった。


それで手動のドアをめいっぱい開いたままにして、店内の入り口に大水害。
早朝のおじさんが、
「おーい!おーい!」
って、カトリーヌさんに怒鳴ってたけど、暴風の中のカトリーヌさんは聞こえてないで、ゆっくり番重置きに歩いてた。


それ、裏の池と戦ってる私は、すぐそこにあるカメラモニターでぜんぶ見てて、おなかよじれそーだった。


カトリーヌさんはまた全身ぽたぽた状態で戻ってきて、ぽたぽたと通路濡らして戻ってきた。
おじさんがキレてる声が、店内のカメラのマイクからモニターのスピーカーに響いてきてた。


「あれ?おじさんの叫び声。なんかあったのかなー」
って、モニターの声に気づいたカトリーヌさんが私に聞いてきたから、私はまたおなかよじれた。


もー残業覚悟で、裏の池をどーにかしよーとしてた。
カトリーヌさんがまたオーナーに電話したら、床で濡れそーなものは上に置け、って怒鳴られただけなんだって。


それでカトリーヌさんは、まだ濡れてないものを上に乗せてった。
それも、濡れちゃったものの上とか、グショ濡れのマットを干してた上とかに、いろいろ濡れてないもの救出して並べてた。


「…そこに置くと、濡れますよ」
って、私が言ったら、
「でもー、置くとこないしー」
って、真顔で答えてきた。


カトリーヌさんには、「濡れてないものを濡れないとこに置く」ってわかんないんだ、って思った。
だから、私は濡れてないとこ探したけど、大量の床のものを置ききれる場所なんて足りなかった。


もー、残業。
でも、人件費ケチケチ対策で残業しちゃいけないことになってるから、時間になったら退勤処理しなくちゃいけない。


裏の壁と床の角のところからも、じわじわと水が溢れ続けてた。
拭いても拭いても拭ききれないの、わかった。
でも、このままで帰れない、って思ったから、カトリーヌさんと、裏のもの片づけてた。


そしたらレジのカメラのマイクから、
「なんで途中で消えてんの?レジやらないってどーいうこと?なに?夜の人たち、なにやってんの?」
って、早朝のおじさんに私たちの悪口言ってる早朝のおばさんの声が響いてきた。


私、それ聞いた途端、持ち上げてた「救出中」のもの、投げ出した。


「帰ろ。もー、夜勤の時間終わり。あとは次の時間帯にやってもらえばいーよ」
って、カトリーヌさんに言った。


「このままで帰ったら、夜勤はなにしてんだ、って怒られるよ」
って、カトリーヌさんが心配してた。
それでカトリーヌさんは、早朝のおばさんに、「裏が浸水で」って説明に行った。


私はカメラのモニターでそれ見てた。
おばさんは、話しかけてるカトリーヌさんに、ぜんぜん目も向けないで完全にムシしてた。
いつもこのおばさんは、気にいらない人をこーやって、すごいムシする。


カトリーヌさんもそれやるから、私はどっちもどっち、っていつも、ムシおばさんたちのこと呆れて見てるだけだったけど。


でも、なんか夜勤の浸水対策を他人事みたいに思ってる早朝や、様子見にこないオーナーに、私はキレちゃった。


私は自分の荷物とカトリーヌさんの荷物持って、裏から出ると、
「時間だから帰りましょー」
って、ドアまで呼んだ。


それでドアから出る時、早朝の人たちに、
「裏がすっごい池でーす。オーナーはなんとかしろーって怒ってたんで、あとはよろしくでーす」
って、明るい声でひきつぎ叫んで、そのままカトリーヌさんひっぱって店から出た。

 

カトリーヌさんが、
「怒られるよー」
って、私を睨んでたけど、私、
「こんな店、潰れちゃえばいーのに」
って言って、それで帰ってきた。


あとは知らない。
明日出勤した時にも、台風の話題なんて出さない。


私もカトリーヌさんも、やれるだけやったからねー。

お客さまの転倒対策で段ボールの道作ったし。

土嚢なんてないから、浸水箇所にムダかもしれないけど段ボールとタオルで小さいダム作ったし。

 

そこまでしても、同じ危機感もったりしないほかの人たちから何言われても、
「次の台風で飛んでっちゃえばいーのに」
ってしか思わない。

 

でも、カトリーヌさん。

帰る時、

「台風だから、できなかった仕事あるから、そのメモ残してく」

って、慌ててメモ残してたの、見た。

 

「台風のため、※※やってません」

その、※※って、店内の作業で台風ぜんぜん関係ない。

それも、台風がぜんぜんひどくなってないヒマな前半に、いつもやらなくちゃいけない作業。

 

「台風のせいにしてさぼってたのかー」

って、私は気づいてなかったから、そのメモでカトリーヌさんのおさぼり知った。

 

みんな、頭の中に台風きてるよねー。

私の頭の中にも、大型台風停滞中。

 

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