負けたいのに
短冊の 「時給あげて」の字 夏の熱気 と共に洗い 流す洒涙雨
なんか句切れがすっきりしない一首(^_^)
土曜日はまたカトリーヌさん(仮名)と組んだ。
シフトに入る時は、朝礼と、前の時間帯からの申し送りがある。
でも、カトリーヌさんは、
「おはようございます」
って私が挨拶しても完全に無視。
朝礼もやらなくて、ものすごい機嫌悪いオーラで自分の仕事始めてた。
前の時間帯の人がそれ見て、私に無言で呆れた目を向けてきた。
その人が帰る時、
「今日、ダイジョーブ?」
って小声で心配してくれてた。
何か言われるより無視される方が楽だから、
「ダイジョーブですよ♪」
って本気で言った。
カトリーヌさんは、黙って無視はしない。
無視してるからね、って感じの態度で無視してくる。
それ見てたら、だんだん可笑しくなってきた。
そよかぜさん(仮名)が、カトリーヌさんの無視を無視してた気持ちもわかった。
バカらしくなるんだと思う。
カトリーヌさんのこと。
ものすごく忙しくなったので、私もカトリーヌさんのことはどうでもよくなった。
それで自分の仕事してたら、カトリーヌさんから呼ばれた。
「なんですか?」
って、私は無視し返さないでフツーの声で答えた。
そしたら、カトリーヌさんがお店のある備品を壊してた。
カトリーヌさんは仕事がいつもすごい雑だから、しょっちゅういろいろ壊す名人。
でも、その備品をどうやったら壊せるか、私にもわからなかった。
「どうしよう」
って言われたから、
「店長に今、電話で報告するしかないと思います」
って言った。
でも、そしたら怒られるし、ヘタしたらクビになるかも、って泣きそうな声で言ってきた。
私のことはクビにさせようとしたくせに。
って思ったけど、黙ってた。
「どうしよう、どうしよう」
ってずっと私の傍に立って、何回も言い続けてた。
ぜったい自分でどうにかする気がないのがわかった。
「じゃあ、私が電話してきます」
って言ったら、
「だから、クビになると困るんだってば!」
って怒鳴られた。
「なんでこれ、壊れやすいってミカサは教えてくれなかったの?ミカサがちゃんと言ってくれればよかったのに!」
って逆ギレもされた。
「そんなの、どうやったら壊せるか、私だってわからないですよ」
って言い返した。
逆ギレされたから、私も結構ムカついて、もう言い返さないで黙って自分の仕事した。
そしたら、カトリーヌさんも、
「私だけが責任あるの?」
とか、ぶつぶつキレながら、壊したのはそのままにして別の仕事始めた。
私の休憩の時に、カトリーヌさんが壊したものをちゃんと見たら、直せそうな気がした。
それで、倉庫から直すのに使えそうなものを拾ってきて、適当に直した。
休憩の交替する時、
「あれ直せたから直しときました」
ってカトリーヌさんに言った。
「えー、直せるなら最初からそう言ってよ」
ってまだキレてたから、私はカトリーヌさんから離れて自分の仕事した。
それからカトリーヌさんがあがる定時まで、私はなるべくカトリーヌさんに近寄らないように仕事してた。
もう喋りたくなかったから。
カトリーヌさんは定時であがったけど、私はそのあとの時間帯もまだ働いた。
私があがる時、カバンの中にスイーツが入ってた。
店で売ってる中でも高いやつ。
「今日はよく働いたね。偉いよ。これはご褒美です」
ってカトリーヌさんのメモが貼りつけてあった。
なんでウエメセ?
ってムカついたけど、でも、これ、カトリーヌさんの謝罪なんだと思った。
年下にちゃんと謝るのはイヤだったんだと思う。
でも、私に悪かったとは思ったのかもね。
ほんとはこっちも素直に、ありがとうって思うべきなのかもしれない。
だけど私は、素直に謝れないカトリーヌさんの気持ち、ってのを、こっちが理解してあげなきゃいけないのがめんどくさくなった。
「これ、いりません」
って返したら、またカトリーヌさんは怒ると思う。
でも、もらっておくと、ぜったいカトリーヌさんに今まで以上にナメられる。
悪人になりきれないなら、人に意地悪いことしなければいいのに。
ってカトリーヌさんにムカついた。
「ありがとうございました」
ってお礼のメモを、カトリーヌさんの制服のポケットに入れて帰ってきた。
ぜんぜんありがとうって思ってないのに、
「ありがとう」
っていうのが、大人の対応なのかわからないけど、お礼言わないとカトリーヌさんがまためんどくさい態度になりそうだと思ったから。
私も腹黒い気がした。
自分が、カトリーヌさんに負けるか弱いタイプじゃないのが悲しい。