従業員と経営者
考えて わからないのは まだ自分 わかるレベルに なれてないから
また1日複数シフトで、その1回がブルータス(仮名)と組んだ。
その前に、他の主婦パートさんから、そよかぜさん(仮名)がやめちゃうかも、って聞かされた。
大学卒業まで続けるって聞いてたから、
「なんでですか?」
ってびっくりして私は聞いた。
そしたら、カトリーヌさん(仮名)が事件起こしてた。
そよかぜさんは頭がいい大学に行ってる。
もうひとつ他にもバイト探してて、カテキョか英語使えるバイトしたい、って言ってた。
そしたら、カトリーヌさんが、無料のタウンワークをどっかでもらってきて、そよかぜさんにあげたんだって。
うちのほうの地域限定のタウンワークの求人って、女向けは飲食店とか介護とか軽作業のラインとか化粧品の営業とかそういうのばっかしかない。
家庭教師とか、オフィスワークとか、そういうのはほとんど載ってない。
男向けもガテン系ばっかだし。
そよかぜさんは、その時は、
「ありがとうございます」
って、無視しないでお礼言ってもらったらしい。
でも、そのタウンワークには載ってないバイトをもう一つ見つけた。
そしたら、カトリーヌさんがキレたんだって。
せっかく人が親切に教えてやったバイトを無視した、って。
その話聞いた私は、
「バカじゃん」
って思った。
ほんとには言わなかったけど。
でも、キレてるカトリーヌさんを、ほんとにバカだと思った。
私とかカトリーヌさんには絶対カテキョは出来ないから。
カテキョのバイトが出来る人って限られてるから。
そよかぜさんは、それが出来る人。
家庭教師が出来るだけ勉強してきた頭のいい人。
英語もしゃべれる。
だから、英語を使うバイトも探したんだと思う。
私とかカトリーヌさんが探すバイトと、そよかぜさんが探せるバイトは、ぜんぜんカテゴリーが違う。
私とかカトリーヌさんがやれるバイトは、
「誰でも出来る」
って職種。
次郎君(仮名・ラーメン次郎が死ぬほど好きな某国立大生のバイト)は、
「うちのバイトも出来ない人はどこでも使えない」
ってよく断言してる。
それぐらい、仕事として、
「誰でも出来る、バカでも出来る」
ってレベル。
でも、カトリーヌさんは、カテキョのバイト探してる子に、カテキョとぜんぜん違うカテゴリーのバイトの求人誌あげて、そこからバイト見つけなかったのは自分が無視された、ってキレてた。
それでそよかぜさんをすごい攻撃したらしい。
そよかぜさんは泣いちゃって、もうやめる、って言ったんだって。
それ教えてくれた主婦パートの人は、カトリーヌさんにすごくキレてた。
カトリーヌさんなんてぜんぜん仕事出来ないんだから、この店に必要ないのはカトリーヌさんのほうだって。
ガマン出来なくて、それを店長にも言ったって。
ブルータスも、そよかぜさんの味方だったから、店長に、
「あのババア、クビにしないなら若いバイトは全員やめます!」
って言ったんだって。
「えー、私もそのやめる人に入れられてんの?」
って私が言ったら、
「ミカサは誰の味方だよ。カトリーヌさんとそよかぜさんとどっちが店に必要だと思うんだよ」
ってキレられた。
「やめるってのに勝手に他の人も入れないでよ!やめんなら自分ひとりでやめなよ!私がやめたい時は自分で言うんだから!」
ってブルータスと喧嘩になった。
「おまえ、カトリーヌを許せるの?」
ってブルータスに言い返された。
私は、カトリーヌさんは店にはいらないと思う。
せっかく入って頑張ってる若い女子をすぐイジメてやめさせるし。
そのくせ、自分はぜんぜん仕事出来ないし。
出来ないってレベルじゃないし。
ぜったい一緒に組んだ人がフォローしないと、その日の仕事が成り立たない。
それにしょっちゅうすごいミスばかりして、会社がそのミスのフォローに苦労してる。
(たとえばすごくお客さんを怒らせたり、ぜったい間違っちゃいけない伝票を適当に処理したり、商品をケースごと破損させたり、新人でも滅多にしないすごいレベルのトラブルが多すぎ)
雇い続けてる会社のメリット、ってフツーに考えるとぜんぜんないと思う。
でも、店長がカトリーヌさんをクビにしない理由は知ってる。
カトリーヌさんは、うちで働いてない時間はぜんぶ暇だから、緊急でシフトに欠員出来た時、電話してすぐに出てこれる。
どの時間帯でも。
そんなこと出来る暇な従業員は、他には私しかいない。
でも私はカトリーヌさんより地獄のシフトになってるから、店長はそういう時、カトリーヌさんを使う。
従業員にはそれぞれ、やらなくちゃいけない決まった仕事があって、それをぜんぶやる契約で規定の時給をもらえることになってる。
だけど、雇われた全員が、やらなくちゃいけない仕事の能力が100%あるわけじゃない。
ワタミみたいなとこだと、全員死ぬ気で100%以上の仕事しろ、って言われるんだと思う。
でも、うちの店長は、
「能力の低い人に、もっと能力高めろって脅してもムリ」
って言う。
「うちみたいなとこは仕事がぜんぜん出来なくて、他で雇ってもらえないような人も来るから」
って。
こういう職場は、人数をある一定はぜったい確保しとかなくちゃいけないから、理想のクオリティにこだわってられないんだと思う。
私もブルータスも、カトリーヌさんより仕事出来ても、一流企業で正社員にはなれないレベルなんだから。
従業員の性格を許せるとか許せないとか、それは経営者の考えじゃないんだと思った。
経営者って、従業員とは考え方が違う。
違わないとダメなんだと思う。
私も最初は、うちの店長ってダメな人ばっか雇って無能だと思った。
みんな、結構店長の悪口言ってるし。
だけど、ダメな人たちをどううまく使うか、って考えるのが経営者の思考なんだってわかってきた。
ダメな人をダメだからってクビにしまくってても、優秀な人ばかり雇えるわけじゃないから。
ダメな人のダメじゃない部分、が、仕事の戦力になるんだと思う。
ずっと会社で雇われて働き続ける人と、会社を自分でやる人と、考え方が違うんだと思う。
最近、お店がどうやって利益出してるのか、少し勉強してみようと思った。
税理とかまだぜんぜんわからないけど、仕入れの時期で帳簿上の売り上げが違うってのは、なんとなくわかってきた。
カトリーヌさんがクビにならないのは、あの人も会社になにかメリットがあるから。
たぶん、そうなんだと思う。
私だったら、いろんな時間帯に入れる人を探して、その人育ててからカトリーヌさんをクビにする。
だけど、店長がそれを考えないのは、私にもまだわかってないメリットがあるんだと思う。
その答えを考えてみるのは面白い。
わからないうちは、ぜったい経営者にはなれないんだと思う。
別に経営者になりたい(なれる)と思ってないけど、経営者を批判するだけの従業員が賢いわけでもないと思うようになった。
店長のこと、あまり好きじゃないけど、でも、仕事は好き嫌いの評価で決めるものじゃないんだと思う。