社会の厳しさ
進撃の巨人の11巻がシールと3Dカードついて1200円だって。
悩む。
この前の土曜、すごく機嫌が悪いってはずだったカトリーヌ(仮名)さんは、寝坊で1時間遅刻してきた。
カトリーヌさんは結構、寝坊の遅刻する。
それも夕勤や夜勤で。
私はいちど就職でやめて、また働くようになってからは一度も遅刻したことはない。
高校の時の遅刻も学校から帰れなかったから。
ふだんは、出勤時間よりだいたい20分から30分ぐらい前に行く。
勤怠は早出の登録はされてないけど。
早朝の人は時々寝坊するけど、出勤時間5分前に来てない人には店から電話がいく。
だいたいの人は、それで慌てて30分以内に来る。
顔も洗わない男のバイトだともっと早く来る。
でも、カトリーヌさんは寝坊すると、
「1時間後に行きます」
って言う。
「1時間もなにしてんだろうね。まさか寝坊したのにゆっくりゴハン食べたりお風呂に入ってくるのかな」
遅刻のせいで残業させられる人は(欠員はダメなので前のシフトの誰かが残る決まり)、みんな不思議がってる。
みんなの疑問は、アタリ。
カトリーヌさんは、ほんとにお風呂入ってちゃんとゴハン食べてくる。
土曜もまた髪の毛が濡れたままで来たから、お風呂入ってきたのがわかった。
だけど、さすがに遅刻したから、私にはぜんぜん機嫌悪くしてこなかった。
私が先に休憩取って、その時、財布から一万円札出してゴハン買った。
「今日は金持ちだね」
って言われたけど、千円札がたまたまなかっただけ。
その次にカトリーヌさんが休憩に入ったけど、
「慌てて来たからお金持ってくるの忘れちゃった。貸して」
って私に千円借りに来た。
「次のシフトで返すから」
またすぐ一緒に組むシフトになってたから、
「いいですよ」
って貸した。
それでカトリーヌさんはゴハンと飲み物とタバコ買った。
少したってから、
「どうせならタバコ、カートンで買うからもう少し貸して」
って手を合わせて笑って言ってきた。
「今度ちゃんと返すから。利子つけるし」
って言われて、断るとまた機嫌悪くなりそうだったからあと五千円札を一枚渡した。
それでタバコを1カートンと、レジの前で売ってるチロルチョコを2つ買ってた。
「これ、利子ね」
って、買ったチロルチョコ2つ、その場でくれた。
お釣りは自分の財布にしまってた。
「借りたの全部で六千円だよね。いっぺんに返すのは今月きびしいから、来月のお給料で返すね」
「えっっっっっっっっっっっっっ」
って声あげそうになったけど、もうカトリーヌさんはバックヤードに入ってた。
騙された。
というか、利子って私が貸したお金で買ったチロルチョコ2つ。
それも1個32円のじゃなくて、20円のやつ。
社会の厳しさ、知った。
遅刻してきたカトリーヌさんは、夜勤明けて定時ジャストで帰った。
そのあとも働いた私は、あがる時、カトリーヌさんがやらなきゃいけなかった伝票整理が残ってるの見つけた。
シフトに書かれてるのより残業すると、残業代はつかないことになってる。
だからサービス残業で伝票整理して帰った。
私があがる前に出勤してきた店長が、カトリーヌさんが帰る時、残してった店長宛てのメモ見てた。
「カトリーヌさん、遅刻したって?遅刻したからやれなかった仕事があるって書いてあるから、それ、ミカサがあとでまた来た時やっといて」
カトリーヌさんは1時間遅刻してきたけど、退勤前3時間はレジで雑誌をずっと読んでた。
そのあいだ、私はずっと自分の仕事してたけど。
「なんで私がやるんですか」
私もムッとして、店長に言い返した。
「だって、ミカサに頼んだら承諾済み、って書いてあるよ」
「…」
頼まれてないし。
頼まれても、承諾しないし。
私の時給あげてくれなくてもいいから、カトリーヌさんの時給さげて欲しい。